かけはた動物病院
かけはた動物病院のブログ「眼科診療への取り組み」
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2010年12月16日

水晶体前房内脱臼から角膜穿孔に至った症例

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症例は、パピヨン、雌、7歳齢です。1カ月半前に右眼が白濁、しょぼつき、疼痛、眼脂。主治医にて注射、点眼で改善。2週間前に再び右眼が白濁、疼痛。白内障と緑内障との診断で治療をしたが改善せず。眼科検査のため紹介され来院しました。
初診時所見において右眼の結膜充血、角膜白濁、しょぼつき、疼痛、眼脂。眼科検査において右眼の威嚇瞬目反応、眩目反射の消失、水晶体の前房内脱臼および眼圧上昇が認められました。
治療計画として右眼に強膜内シリコン義眼挿入術を提案したのですが同意を得られなかったため、非ステロイド消炎剤と炭酸脱水酵素阻害剤の点眼による経過観察としました。
初診から12日後に「昨夜からの右眼のしょぼつきがあり、朝起きたら寝床に白い物が落ちていた。」と来院されたところ、角膜穿孔による水晶体の脱出が認められました。穿孔部には細菌の繁殖は認められなかったことから、前房内脱臼した水晶体と角膜内皮の摩擦による機械的損傷に加え、続発緑内障による圧力によって角膜内皮が破綻し、角膜穿孔に至った可能性が考えられました。
DSC05011 (2).JPGDSC05014 (2).JPG本症例は、右眼にも水晶体亜脱臼が認められたことから、原発性あるいは遺伝性の水晶体変位が考えられました。いずれにしても、このような状況では非常に予後が悪いということが実証された貴重な症例でした。水晶体前房内脱臼の合併症のひとつとして角膜穿孔もあり得るため、早期の外科的治療が望ましいと思われました。
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瞬膜腫脹を呈したゴールデンレトリバー

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症例はゴールデンレトリバー、雄、2歳齢です。3週間前から左眼の充血、眼脂。20日前に主治医受診、結膜炎の治療で改善せず、瞬膜が腫脹。1週間前に瞬膜の腫脹が両眼に進行したため来院しました。
初診時において両眼の瞬膜突出、腫脹、充血が認められました。眼科検査では両眼ともに威嚇瞬目反応、眩目反射、対光反射、涙液量、眼圧に特に異常は認められませんでした。血液および血液化学検査所見においても、特に異常は認められませんでした。
鑑別診断リストとして、まず瞬膜の炎症と腫瘍を考えました。炎症性疾患にはプラズマ細胞浸潤、結節性肉芽腫性上強膜角膜炎、眼結節性筋膜炎、濾胞性結膜炎などが、腫瘍にはリンパ腫、他の全身性腫瘍などが考えられました。
瞬膜の擦過スワブ標本において上皮細胞の他、リンパ球、プラズマ細胞が認められ、針吸引生検においてもリンパ球、プラズマ細胞および好中球が採取されたことから、プラズマ細胞浸潤と暫定診断し、プレドニゾロンの全身投与、サイクロスポリンAの局所投与を実施したところ改善が認められました。
現在のところ投薬量を漸減、休薬しても数カ月間再発は認められていないことから、何らかの免疫刺激による炎症性病態が存在したものと考えられました。今後、再発あるいは悪化がみられるようであれば、組織生検などによる精査が必要と思われました。
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2009年12月27日

ブルセラ・カニス抗体が陽性であった犬のブドウ膜炎

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犬のブドウ膜炎の要因のひとつとして、ブルセラ・カニス感染症(以下、ブルセラ症)が報告されています。ブルセラ症によるブドウ膜炎は、肉芽腫性虹彩毛様体炎、浸出性網膜炎および前房蓄膿が特徴とされていますが、日本での報告は少なく発生状況は不明です。
今回、眼瞼痙攣、流涙、角膜浮腫、前房フレア、虹彩・毛様体部の肥厚、視神経乳頭の腫脹、漿液性網膜剥離を特徴とするブドウ膜炎を呈した4例の犬に対し、ブルセラ・カニス抗体を測定したところ陽性であったので、ブルセラ症によるブドウ膜炎を疑いました。
治療により眼症状は良好に反応し全例に改善が認められましたが、4例中2例に再発が認められ、2例に発熱、腰痛、精巣炎、皮膚炎などの全身症状が認められました。また、全例に長期の抗生物質投与を実施しましたがブルセラ・カニス抗体価の陰性化は認められませんでした。4例中2例は良好に経過し、1例は緑内障により視覚喪失、1例は合併症により死亡しました。
ブルセラ症は治療に抵抗性であり、眼症状の改善がみられたとしても、再燃や全身症状の悪化を含め、予後に十分な注意が必要であると考えられました。犬のブルセラ症は本邦においても広く分布していると思われ、典型的な全身症状をともなわなくても、犬のブドウ膜炎の原因のひとつとしてブルセラ症の関与を積極的に疑う必要があると考えられました。
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犬のVKH様症候群

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犬のブドウ膜皮膚症候群(Uveo-dermatologic Syndrome)は、人のVogt‐小柳‐原田病(VKH disease)に著しく類似していることより、VKH様症候群とも呼ばれています。本疾患はメラノサイトに対する自己免疫疾患であると考えられており、通常、ブドウ膜炎と色素脱失性皮膚炎が同時に進行します。特に秋田犬、サモエド、ハスキーに多発傾向があり、免疫反応を抑制しなければメラノサイトが破壊されるとともに炎症が他の組織に波及し、不可逆的な視機能の障害をきたす恐れがあります。犬ではプレドニゾロンおよびアザチオプリンの投与および漸減維持が推奨されていますが、積極的治療が遅れると続発症の危険が増大します。
人のVKH diseaseにおいて、日本ではステロイド剤の大量療法(パルス療法など)が中心に、欧米などでは免疫抑制剤が投与されることが多いようです。写真の秋田犬はVKH様症候群を呈したため、コハク酸メチルプレドニゾロンによるパルス療法に加えアザチオプリンによる維持療法を実施し、眼症状、皮膚症状ともに改善し良好に維持されました。しかしながら、同疾患に対する薬剤の副作用(肝障害、骨髄抑制など)のために治療を断念せざるをえない場合や、反応が悪く続発症(緑内障、白内障、網膜剥離など)の悪化ために視覚を喪失する場合も少なくありません。
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2008年03月04日

強膜内シリコン義眼挿入術

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強膜内シリコン義眼挿入術は、主に視覚を喪失した緑内障眼に対する救護法であり、緑内障末期で牛眼を呈している場合、あるいは様々な緑内障治療を実施したにもかかわらず視覚回復の見込みがない場合に、眼疼痛や角膜障害からの開放を目的に適応される方法のひとつです。また緑内障以外の疾患に対しても、外観上の変化に対する美容形成法として、あるいは看護負担の軽減のために試みる価値のある方法と思われます。
強膜内シリコン義眼挿入術の適応例として圧倒的に多いのは牛眼です。牛眼は眼疼痛、角膜障害など様々な問題を引き起こすほか、オーナーや治療に携わる獣医師にとっても非常にストレスとなる病態です。強膜内シリコン義眼挿入術は、牛眼および緑内障の苦痛から永久に開放するための救護療法として、生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)の向上を期待できる方法と思われます。
写真のラッキーちゃんは驚くほど眼が大きく可愛い顔でした!・・・が、目が閉じられず重度の角膜障害が見られたため、強膜内シリコン義眼挿入術を適応しさらに可愛い顔になりました。
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2008年02月29日

柴犬の緑内障についてのひとりごと

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柴犬は緑内障になりやすい犬種であることは周知の事実であり、そのほとんどは閉塞隅角を特徴とする原発緑内障で、房水流出の障害によって引き起こされると考えられています。柴犬はもともと虹彩角膜角が狭く櫛状靭帯の形成異常が多いようです。柴犬の原発緑内障は高率に両眼に発症しますので、反対眼にも予防的な抗緑内障薬の点眼し発症を少しでも抑えていくことが勧められています。
数年前、海外講師による眼科セミナーで原発緑内障の診断基準とは、前房フレアがないこと、前房に細胞が浮遊していないこと、水晶体変位がないことと教わりました。しかし、わが国に非常に多くみられる柴犬や柴系雑種犬の緑内障には、このようなパターンはほとんど当てはまりません。当院でも柴犬の緑内障には例外なく前房フレアが認められています。炎症やその他の原因をともなわないのが原発緑内障。とすると柴犬の緑内障は原発緑内障?それともブドウ膜炎性の続発緑内障?診断に非常に苦慮します。
おそらく初期には炎症をともなわない緑内障がじわじわと進行し、ある時点で急に眼圧が上昇するのでしょう(いわゆる急性期)。それとともに血液と房水のバリアが破綻し前房内にフレアが現れるのだと思われます。急性症状2日以内の緑内障だと治療を積極的に進めていけるのですが、それ以上経過すると視神経のダメージが大きく、来院時にはすでに手遅れということも少なくありません。
動物が痛みや視覚障害を訴える前の、初期の緑内障を発見することはとても難しいことだと思いますが、結膜炎かな?と思う程度でも緑内障がじわりと始まっているかもしれません。典型的な症状をともなわない軽度の眼圧上昇を見逃さず、適切に治療することができれば緑内障の治療成績はもっと向上すると思われます。特に柴犬の飼い主様は、充血、目やにを軽視せず、おかしいな…と思ったら診てもらってください。
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2007年11月09日

頬骨腺粘液嚢胞による眼球突出

DSC03568.JPGDSC03569.JPGDSC03567.JPG片側性の眼球突出を主訴に来院した犬2例に頬骨腺粘液嚢胞が認められました。両者とも処置により眼球突出の症状は改善したのですが、1例の患眼は視覚喪失に至りました。
頬骨腺は頬骨弓の腹側、眼窩骨膜の腹側部に面し、上下に扁平な20mm×10mm程度の大きさで犬、猫のみに認められます。導管である頬骨腺管は複数認められますが、特に大きい1本の大頬骨腺管は上顎最後後臼歯付近の頬粘膜に開口しています。
視覚喪失に至った症例には患部の疼痛および血中CRP値の上昇が認められ、超音波検査において眼窩内の占拠病変による眼球の変形が重度でした。治療5日後には眼球突出は改善されたのですが、視覚は戻りませんでした。治療14日後の網膜電位検査がノーマルであったにもかかわらず視覚反応が認められなかったことから、患眼の視覚喪失の原因は頬骨腺粘液嚢胞による視神経の損傷と判断しました。
両者ともに犬種はウェルシュ・コーギーで、上顎最後後臼歯付近の歯肉に炎症がみられました。ウェルシュ・コーギーはバードバイターと呼ばれ、硬いものを思いきり噛む習性があるようです。今回の子たちも硬いものが大好きで、豚の蹄やプラスチックのおもちゃをバリバリと噛むとのこと。今回の原因に関連がありそうです・・・
posted by かけはた at 02:26| 眼科診療室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月30日

硝子体動脈遺残がみられた犬の白内障

3498_20070914_Eye_0002.JPG白内障手術を希望しミニチュア・シュナウザー、雄、2歳齢が来院しました。左眼に過熟白内障による視覚障害および超音波検査において硝子体動脈遺残(Persistent Hyaloid Artery: PHA)が認められました。また超音波カラードプラにおいて硝子体動脈に血流が認められました。この白内障はPHAに合併するものと考えられました。初診時において既に過熟期の白内障を呈しており、水晶体後部の透見が不可能であったため、水晶体血管膜過形成遺残/第一次硝子体過形成遺残(PHTVL/PHPV)などの合併は診断できませんでした。
PHAに関連する白内障の治療には、前部硝子体切除術と組み合わせた水晶体後嚢の開窓と硝子体動脈の切断を併用する白内障手術が適応されますが、硝子体動脈が開存している場合や重度のPHTVL/PHPVの白内障手術の予後は、合併症(術中あるいは術後硝子体内出血、牽引帯の形成、網膜剥離など)のリスクが非常に高くなるため、単純な成熟白内障のルーチンな手術よりも注意が必要とされています。また本症例では水晶体の吸収および虚脱が認められたことから、さらに手技が困難になることが予想されたため手術適応外と判断しました。

posted by かけはた at 00:27| 眼科診療室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月10日

シーズーに多い網膜剥離

突然の視覚障害を訴えてシーズーが来院しました。眼底検査、超音波検査などで網膜剥離であることがわかりました。
網膜剥離はシーズーに多くみられます。片眼の網膜剥離が検診時に偶然見つかることも少なくありません。おそらくシーズーの眼の形状と興奮しやすい性格、あるいは遺伝的な素因で網膜の異形成があるのかもしれませんが、詳しい解析はなされていません。
今回の網膜剥離による視覚喪失について、両眼の完全網膜剥離が認められますが、網膜血管の萎縮が右眼より左眼で著明であること。網膜の肥厚が右眼より左眼で著明であること。右眼の硝子体混濁に出血痕がみられることから、おそらく左眼の網膜剥離が以前から存在し、今回右眼の網膜剥離が発症したものと推測されます。
網膜剥離の治療には、硝子体手術の設備を備えた施設が必要です。現在、硝子体手術に対応できる動物病院は東京と釧路に2病院があるだけですが、一般の症例に対する治療はまだ確立されておらず、治験段階です。もし飼い主様のご希望がありましたらご紹介させていただきます。教科書的には、現在のところ網膜全剥離に対する確立された治療はありません。
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posted by かけはた at 21:38| 眼科診療室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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